法令と地震防災
災害対策基本法と防災計画
目次- ● 災害対策基本法
- ● 中央防災会議
- ● 地方防災会議
- ● 災害対策本部
- ● 防災計画
- ● 防災基本計画
- ● 防災基本計画(震災対策編)
- ● 危険物施設等の震災対策
- ● 防災基本計画(危険物等災害対策編)
- ● 地震防災対策強化地域の指定と地震防災計画
- ● 警戒宣言と地震災害警戒本部
- ● 東海地震に係る地震防災基本計画
- ● 危険物施設等の地震防災応急計画
- ● 東海地震の予知に関する情報
- ● 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法
- ● 東南海・南海地震防災対策推進基本計画
- ● 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法
- ● 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画
- ● 危険物施設等の地震防災対策計画
- ● 強化地域、推進地域の防災計画
- ● 地震対策大綱の位置付け
- ● 東海地震対策大綱
- ● 東南海・南海地震対策大綱
- ● 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱
- ● 首都直下地震対策大綱
- ● 南関東地震直下の地震対策に関する大綱
■災害対策基本法
● 災害対策基本法
【災害対策基本法の基本概念】
災害対策基本法は、防災に関し、国、地方公共団体、その他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧、財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の推進を図ろうとするものです。防災計画は国、都道府県、市町村の各レベルで作成され、これに基づいて災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興が実施され、あるいは推進されます。
【災害対策基本法の構成】
災害対策基本法の構成は次のとおりとなっています。
● 中央防災会議
【中央防災会議】
中央防災会議は会長と委員をもって組織し、会長は内閣総理大臣をもって充てることとされています。中央防災会議には、専門事項の調査のため、専門委員を置くことができるとされています。また、幹事を置き、委員及び専門委員を補佐するものとしています。中央防災会議は、その議決により、専門調査会を置くことができるとされています。
【委員の構成と専門調査会】
現在、中央防災会議の委員には、全閣僚と指定公共機関の長4名、学識経験者4名が任命されています。専門調査会には、これまでに東南海・南海地震等に関する専門調査会、東海地震対策専門調査会、首都直下地震対策専門調査会などが設置されてきました。
● 地方防災会議
【都道府県防災会議】
都道府県防災会議は会長と委員をもって組織し、会長は都道府県知事をもって充てることとされています。都道府県防災会議には、専門事項の調査のため、専門委員を置くことができるとされています。また、幹事を置き、委員及び専門委員を補佐するものとしています。また、部会を置くことができるとされています。
【市町村防災会議】
市町村には、当該市町村の地域防災計画の作成及びその実施の推進のため、市町村防災会議を置くこととされています。市町村は、共同して市町村防災会議を設置することもでき、市町村防災会議を設置することが不適当又は困難であるときは設置しないこともできるとされています。設置しないときは都道府県知事と協議し、都道府県知事は都道府県防災会議の意見を聞くこととされています。
市町村防災会議の組織及び所掌事務は、都道府県防災会議の組織及び所掌事務の例に準じることとなっています。
【地方防災会議の協議会】
都道府県相互の間又は市町村相互の間において、当該都道府県又は市町村の全部又は一部にわたり都道府県相互間地域防災計画又は市町村相互間地域防災計画を作成することが必要かつ効果的であると認められるときは、規約を定め、都道府県防災会議の協議会又は市町村防災会議の協議会を設置することができるとされています。会長は、関係都道府県防災会議又は関係市町村防災会議の会長又は委員のうちから協議により定める者をもって充てるとされています。
● 災害対策本部
都道府県又は市町村の地域において災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合において、防災の推進を図るために必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長は、災害対策本部を設置することができるとされています。また、事務の一部を行う組織として、現地災害対策本部を置くことができるとされています。
非常災害が発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により災害応急対策を推進するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣は臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができるとされています。非常災害対策本部には、事務の一部を行う組織として、非常災害現地対策本部を置くことができるとされています。 また、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合には、同様にして緊急災害対策本部を設置し、緊急災害現地対策本部を置くことができるとされています。
● 防災計画
【防災計画の体系】
防災計画は防災基本計画、防災業務計画、地域防災計画より成り、地域防災計画はさらに都道府県地域防災計画、市町村地域防災計画より成ります。都道府県間、市町村間で必要と認めるときは、協議会において都道府県相互間地域防災計画、市町村相互間地域防災計画が作成されます。
指定行政機関の長は、防災業務計画の作成、実施に当たっては、他の指定行政機関の長が作成する防災業務計画との間に調整を図り、防災業務計画が一体的かつ有機的に作成され、実施されるよう努めることとされています。また、都道府県地域防災計画は防災業務計画に抵触しないこと、市町村防災計画は防災業務計画、都道府県防災計画に抵触しないこととされています。それらの防災計画の要旨は公表されることになっています。
【防災計画の見直し】
中央防災会議は、科学的研究の成果、発生した災害の状況及び災害応急対策の効果を勘案し、毎年防災基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは修正することとされています。指定行政機関の長、指定公共機関、都道府県防災会議、市町村防災会議(市長村防災会議を設置しない市町村にあっては市町村長)も、防災業務計画、地域防災計画に毎年検討を加え、必要と認めるときは修正することとされています。
■防災基本計画
● 防災基本計画
災害対策基本法に基づく防災基本計画は、国、公共機関、地方公共団体、事業者、住民それぞれの役割を明らかにしながら定めるとともに、防災業務計画及び地域防災計画において重点を置くべき事項の指針を示し、わが国の災害に対処する能力の増強を図ろうとするものです。
防災基本計画は、震災対策に始まって林野火災編に至るまで、災害の種類別に、予防、応急、復旧・復興それぞれの段階における諸施策を具体的に記述しています。
● 防災基本計画(震災対策編)
【震災対策編の構成】
防災基本計画の震災対策編の構成は次のとおりとなっています。
【耐震設計の基本的な考え方】
現在の防災基本計画は、1995年の兵庫県南部地震の後、同地震の経験を踏まえて抜本的に改訂されたものです。地震に強い国づくり、まちづくりを行うには構造物・施設等の耐震性を確保する必要があるとされ、その場合の耐震設計の基本的考え方が示されています。その考え方とは、「構造物・施設等の耐震設計に当たっては、供用期間中に1〜2度程度発生する確率を持つ一般的な地震動、及び発生確率は低いが直下型地震または海溝型巨大地震に起因する更に高レベルの地震動をともに考慮の対象とする。この場合、構造物・施設等は、一般的な地震動に際しては機能に重大な支障が生じず、かつ高レベルの地震動に際しても人命に重大な影響を与えないことを基本的な目標として設計するものとする。」というものです。
【災害予防のための施策】
地震防災では事前の災害予防と迅速かつ効果的な災害応急対策が必要であって、改正に併せ、いくつかの施策がとられてきました。各分野の耐震設計基準の見直し、地方公共団体による地震防災緊急事業5カ年計画の実施、防災上重要な建築物の耐震改修、地震防災推進本部の設置、緊急地震速報の実用化などがそうです。
● 危険物施設等の震災対策
防災基本計画の震災対策編には、他の構造物・施設等と共通するものを含め、石油コンビナート等の危険物施設等の震災対策として次のような基本事項が記述されています。危険物等施設とは、石油類、火薬類、高圧ガスその他政令で定めるものの製造、貯蔵、処理又は取扱いを行う施設のことをいっています。
● 防災基本計画(危険物等災害対策編)
【危険物等災害対策編の構成】
防災基本計画の危険物等災害対策編の構成は次のとおりとなっています。ここで危険物等とは、危険物、高圧ガス、毒物・劇物、火薬類のことを言います。
【危険物等災害における非常災害対策本部の設置】
防災基本計画の危険物等災害対策編では、石油コンビナート等の特定事業所で社会的影響が大きい大規模な危険物等災害が発生した場合、内閣官房は政府としての初動措置に関する情報の収集等を行い、収集した情報により大規模な被害が発生していると認められたときは、国は直ちに非常災害対策本部を設置するものとしています。設置場所は、原則として危険物等の取扱規制担当省庁[消防庁、経済産業省、厚生労働省]内とされています。
非常災害対策本部は、被災状況を把握し、応急対策の迅速かつ的確な実施、事故原因の究明等に資するため、必要に応じ、政府調査団の派遣を行うものとされています。また、指定地方行政機関、地方公共団体等の各機関が実施する災害応急対策の総合調整に関する事務のうち、現地において機動的かつ迅速に処理する必要がある場合には、非常災害現地対策本部を設置するものとされています。
災害を発生した事業所が特別防災区域内の特定事業所である場合には、石油コンビナート等災害防止法が適用され、都道府県には石油コンビナート等防災本部が、現地には石油コンビナート等現地防災本部が設置されます。特別防災区域が所在する都道府県では石油コンビナート等防災計画が作成されますが、同法により、同計画は防災基本計画、防災業務計画、都道府県地域防災計画、都道府県相互間地域防災計画に抵触しないように作成されることになっています。
■大規模地震対策特別措置法
防災基本計画の震災対策編では、国及び地方公共団体は、地域の特性に配慮しつつ、地震に強い国づくり、町づくりを行うものとし、防災基本計画によるほか、地震防災対策強化地域においては地震防災基本計画に基づき、地震防災対策推進地域では地震防災対策推進基本計画に基づき、地震防災に関する措置を実施するものとしています。
● 地震防災対策強化地域の指定と地震防災計画
【地震防災強化地域の指定】
大規模地震対策特別措置法では、内閣総理大臣は、大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと求められる地殻内において大規模な地震が発生した場合、著しい地震災害が生じるおそれがあるため、地震防災に関する対策を強化する必要がある地域を地震防災対策強化地域(強化地域)として指定するものとしています。指定にあたっては、中央防災会議に諮問し、関係都道府県知事の意見を聞くこととしています。強化地域には、平成19年4月1日現在、東海地震が発生した場合の影響が特に大きいと予想される地域として、8都県174市町村が指定されています(内閣府 防災情報のページ)。
【地震防災計画】
強化地域の指定があった場合には、中央防災会議は当該地域に係る地震防災基本計画を作成することとされています。また、指定行政機関の長(事務の委任を受けた場合は委任を受けた指定地方行政機関の長)、指定公共機関(委任された業務については指定地方公共機関)、地方防災会議等、石油コンビナート等防災本部は、地震防災基本計画を基本に地震防災強化計画を作成することとしています。また、地震防災上の措置を講ずる必要があると認められる重要な施設、事業を管理、運営する者は、当該施設又は事業ごとに地震防災応急計画を作成することとしています。重要な施設、事業には、病院、劇場、百貨店、旅館その他不特定多数の者が出入りする施設、石油類、火薬類、高圧ガスその他政令で定めるものの製造、貯蔵、処理又は取扱いを行う施設、鉄道事業その他一般旅客輸送に関する事業などが含まれています。
● 警戒宣言と地震災害警戒本部
【警戒宣言】
大規模地震対策特別措置法では、内閣総理大臣は気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒宣言を発することになっています。また、強化地域の居住者等(居住者、滞在者、その他の者及び公私の団体)に対して警戒態勢をとるべき旨を公示し、関係機関、都道府県知事には地震防災応急対策に係る措置を執るべき旨を通知し、また、地震予知情報の内容について国民に対し周知させる措置をとることになっています。
警戒宣言を発した後、気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、当該地震の発生のおそれがなくなったと認めるときは、閣議にかけて、地震災害に関する警戒解除宣言を発するとともに、警戒態勢を解くべき旨を公示し、措置を中止すべき旨を通知するものとしています。
【地震災害警戒本部と地震災害応急対策】
内閣総理大臣は、警戒宣言を発したときは、臨時に内閣府に地震災害警戒本部を設置することになっています。また、警戒宣言が発せられたときは、強化地域に係る都道府県知事又は市町村長は都道府県地震災害警戒本部(以下、都道府県警戒本部という)又は市町村地震災害警戒本部(以下、市町村警戒本部という)を設置することになっています。警戒宣言が発せられたときは、指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関、地震防災応急計画を作成した者その他法令の規定により地震防災応急対策の実施の責任を有するものは、法令または地震防災計画の定めるところにより、地震防災応急対策を実施しなければならないとされています。
地震災害警戒本部は、地震防災応急対策等(地震防災応急対策又は災害対策基本法に規定する災害応急対策)の総合調整を行い、都道府県警戒本部は都道府県内の地震防災応急対策等の連絡調整、実施、実施の推進を行い、市町村警戒本部は市町村内の地震防災応急対策の実施、実施の推進を行います。ここで地震防災応急対策とは、警戒宣言が発せられた時から当該警戒宣言に係る大規模な地震が発生するまで又は発生するおそれがなくなるまでの間において当該大地震に関し地震防災上実施すべき応急の対策のことを言います。
地震災害警戒本部は、非常(緊急)災害対策本部が設置された時又は警戒本部の設置期間が満了した時に廃止されるものとなっています。都道府県警戒本部又は市町村警戒本部は、災害対策本部が設置された時、あるいは警戒解除宣言があったときに廃止されることになっています。
● 東海地震の地震防災基本計画
【地震防災基本計画の構成】
東海地震の地震防災強化地域に係る地震防災基本計画の構成は次のとおりとなっています。
● 危険物施設等の地震防災応急計画
東海地震の地震防災基本計画には、石油コンビナート等の危険物施設等の地震防災応急計画の基本事項として、次のような事項が記述されています。
● 東海地震の予知に関する情報
大規模地震対策特別措置法では、内閣総理大臣は気象庁長官から地震予知情報の報告を受けた場合において、地震防災応急対策を実施する緊急の必要があると認めるときは警戒宣言を発することになっています。
東海地震の予知に関する情報の発表の仕方は、気象庁の「東海地震に関する新しい情報発表について」(平成15年7月28日報道発表)に記されています。 新しい方法では、東海地震の予知に関する情報について、東海地震観測情報、東海地震注意情報、東海地震予知情報の3段階の発表を行うこととしています。
東海地震の観測データに異常が現れているが、東海地震の前兆現象の可能性について直ちに評価できない場合等には観測情報が発表され、東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合には注意情報が発表されます。注意情報が発表された場合には、準備行動開始の意思決定等の対応がとられます。そして、東海地震が発生する恐れがあると認められた場合には、予知情報が発表され、これを受けて警戒宣言等の対応がとられます。東海地震発生のおそれがなくなったと認められた場合には、安心または解除の観測情報、注意情報、予知情報が発表されます。
東海地震に関連する情報体系の見直しに当たっての考え方として、最近の地球科学の知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりもある程度前に今後の推移について説明可能な段階が設定できると考えられることから、東海地震の前兆現象の可能性が高まったことを示す情報(注意情報)を新設し、警戒宣言前からの防災面の準備行動に資するとしています。また、どのようなときにどのような情報が発表されるかをあらかじめ知っておくことは的確な行動実施のみならず、無用な混乱を回避するためにも重要であることから、東海地震に関連する情報の発表基準を可能な限り明確にするとし、その基準も示しています。
■地震防災対策の推進に係る特別措置法
防災基本計画の震災対策編では、大規模地震対策特別措置法のところでも述べたように、防災基本計画によるほか、地震防災対策強化地域においては地震防災基本計画に基づき、地震防災対策推進地域では地震防災対策推進基本計画に基づき、地震防災に関する措置を実施するものとしています。
● 東南海地震・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法
【東南海・南海地震防災対策推進地域の指定】
東南海地震・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法では、内閣総理大臣は、東南海・南海地震が発生した場合に著しい地震災害が生じるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、東南海・南海地震防災対策推進地域(推進地域)として指定するものとしています。指定にあたっては、強化地域の指定の場合に同じく、中央防災会議に諮問し、関係都道府県知事の意見を聞くこととしています。
【地震防災対策推進の計画】
推進地域の指定があったときには、中央防災会議は東南海・南海地震防災対策推進基本計画(基本計画)を作成し、指定行政機関の長(事務の委任を受けた場合は委任を受けた指定地方行政機関の長)、指定公共機関(委任された業務については指定地方公共機関)、地方防災会議等、石油コンビナート等防災本部は、基本計画を基本に東南海・南海地震防災対策推進計画(推進計画)を作成することとされています。また、地震防災上の措置を講ずる必要があると認められる重要な施設、事業を管理、運営する者は、当該施設又は事業ごとに東南海・南海地震防災対策計画(対策計画)を作成することになっています。地震防災上の措置を講ずる必要があると認められる重要な施設には危険物施設等を含みます。
● 東南海地震・南海地震防災対策推進基本計画
【東南海・南海地震地防災対策推進基本計画の構成】
東南海・南海地震防災対策推進基本計画の構成は次のとおりです。
● 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法
【日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域の指定】
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法では、内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生じるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域【推進地域)として指定するものとしています。指定の方法は東南海・南海地震防災対策の場合に同じです。
【地震防災対策推進の計画】
推進地域の指定があったときには、東南海・南海地震の場合に同じく、地震防災対策推進基本計画、地震防災対策推進計画、地震防災対策計画が作成されます。
● 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画
【日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画】
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画の構成は次のとおりです。積雪・寒冷地特有の問題への対応が加わっているほかは、東南海・南海地震防災対策推進基本計画にほとんど同じです。
● 危険物施設等の地震防災対策計画
東南海・南海地震防災対策推進基本計画及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画には、危険物施設等の地震防災対策計画の基本事項として、次の事項が記述されています。
● 強化地域、推進地域における防災計画
大規模地震対策特別措置法では、地震防災対策の強化に必要な事項(地震防災計画)を、防災業務計画、地域防災計画、石油コンビナート等防災計画に定めることとしています。東南海地震・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法では、地震防災対策の推進に必要な事項(地震防災対策推進の計画)を、同じく防災業務計画、地域防災計画、石油コンビナート等防災計画に定めることとしています。したがって、地震防災対策強化地域、地震防災対策推進地域に指定された地域も、防災計画は一本化されることになります。
なお、地震防災上の措置が必要な重要な施設、事業において、法に定められた防災規程、保安規程などに必要事項を定めた場合は、当該部分(地震防災規程)を地震防災応急計画、地震防災対策計画とみなすとしています。強化地域、推進地域の特定防災区域に係る防災計画については、石油コンビナート等災害防止法のところで説明します。
■地震対策大鋼
● 地震対策大綱の位置づけ
日本では、近い将来に発生する可能性が高いとされる大規模地震として、東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が挙げられています。また、政治・経済・社会に甚大な影響を及ぼすと予想される地震として、首都直下地震が挙げられています。
東海地震については、大規模地震対策特別措置法に基づき、地震防災対策強化地域が指定され、同地域を対象にした地震防災基本計画が中央防災会議において策定されています。また、東南海・南海地震、及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震については、それぞれの地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づき、それぞれ地震防災対策推進地域が指定され、それらの地域を対象にした地震防災対策推進基本計画が中央防災会議において策定されています。
中央防災会議は、災害対策基本法に基づく防災基本計画(震災対策編)及び前記の地震防災基本計画、地震防災対策推進基本計画とは別に、平成15年に東海地震対策大綱を、平成15年に東南海・南海地震対策大綱を、平成17年に首都直下型地震対策大綱を、そして平成18年に日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱を改訂、あるいは新規に策定しています。首都直下地震対策大綱の策定に伴って平成17年に廃止されましたが、南関東地域直下の地震対策に関する大綱も平成10年に改訂されていました。これらの大綱は、定期的に関係府省からの報告により、対策の具体化および推進の状況について把握し、整理するものとし、また、課題についての検討成果、施策の進捗状況等を踏まえ、必要に応じ見直しを行っていくものとしています。
兵庫県南部地震、中越沖地震などの経験により、直下型の大地震はいつどこで起きてもおかしくないといわれるようになってきた現在、大綱も、地震被害を軽減するには、強化地域、推進地域の内外に係わらず、全国的な視点から総合的な地震対策を進める必要があるとしています。
大綱には石油コンビナート等の地震防災対策に関連する事項も含まれており、ここでは各大綱について(平成19年10月1日現在)、その位置づけ、構成、石油コンビナート等に関連する事項について、簡単にまとめておくことにします。廃止された南関東地域直下の地震対策に関する大綱も加えています。
なお、これらの基本計画、大綱とは別に、被害想定に基づく減災目標とその達成のための具体的目標を定めた「地震防災戦略」、災害発生時に関係機関がとるべき行動を示した「応急対策活動要領」が、中央防災会議において策定されています。
● 東海地震対策大綱
【大綱の位置づけ】
東海地震対策大綱は、駿河湾及び駿河トラフ付近におけるフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界面を震源とし、いつ発生してもおかしくないと想定されている巨大地震(想定東海地震)を対象としています。
災害対策基本法に基づく防災基本計画(震災対策編)は、長期的かつ総合的な視点から防災上必要な諸施策の基本について、国、地方公共団体、指定公共機関における各々の役割等を定めたものであるが、本大綱は、防災基本計画と整合を図りつつ、東海地震対策を推進するにあたって必要な総合的な対策の進め方を具体的に定めるものであるとしています。さらに、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災基本計画は強化地域内を対象とし、警戒宣言時の地震防災応急対策等について定めたものであるが、本大綱は、地震防災基本計画に規定される内容も含め、予防対策、災害発生時の応急計画、復旧・復興対策までを含んだ総合的な対策を視野に入れ、強化地域外における対策についても定めるものであるとしています。
また、本大綱は東海地震を対象にしているが、特に予防的対策については東海地震だけでなく、東南海地震等の発生も考慮して行う必要があり、今後相当期間が経過し、東南海地震等との連動が危惧されるに至った場合には、本大綱を抜本的に見直すものとしています。
【大綱の構成】
東海地震対策大綱は、次のような構成となっています。
【大綱の石油コンビナート等関連事項】
東海地震対策大綱は、石油コンビナート等に関連して、次の基本的事項を定めています。
● 東南海・南海地震対策大綱
【大綱の位置づけ】
東南海・南海地震対策大綱は、遠州灘西部から土佐湾までの南海トラフのプレート境界面を震源域とし、今世紀前半にも発生が懸念されている東南海・南海地震を対象にしています。
東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく東南海・南海地震防災対策推進基本計画(推進基本計画)は、推進地域における地震防災対策の推進に関する重要事項を定めるものであるが、東南海・南海地震対策大綱は、推進基本計画に規定される内容も含め、推進地域外における対策についても定めるものとしています。
また、今後、東海地震が相当期間発生しなかった場合には、東海地震と東南海・南海地震が連動して発生する可能性も生じてくると考えられるため、今後10年程度経過した段階で東海地震が発生していない場合には、東海地震対策と合わせて本大綱を見直すものとしています。
【大綱の構成】
東南海・南海地震対策大綱は、次のような構成となっています。
【大綱の石油コンビナート等関連事項】
東南海・南海地震対策大綱は、石油コンビナート等に関連して、次の基本的事項を定めています。
● 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱
【大綱の位置づけ】
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策大綱は、房総半島の東方沖から三陸海岸の東方沖を経て択捉島の東方沖までの日本海溝及び千島海溝並びにその周辺の地域におけるプレートの境界又はその内部を震源とする大規模な地震を想定しています。
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画(推進基本計画)は推進地域における地震防災対策の推進に関する重要事項を定めるものですが、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策大綱は、推進基本計画に規定される内容も含め、推進地域外における対策についても定めるものとしています。
【大綱の構成】
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱は、次のような構成となっています。
【大綱の石油コンビナート等関連事項】
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策大綱は、石油コンビナート等に関連して、次の基本的事項を定めています。
● 首都直下地震対策大綱
【大綱の位置づけ】
首都地域の地震対策については、平成4年に南関東地域直下で発生するM7クラスの地震を対象にした「南関東地震直下の地震対策に関する大綱」が策定され、阪神・淡路大震災の経験を踏まえて平成10年に改訂されました。近年、関東地域の地殻変動に関する定点観測網が充実し、首都直下の地震像を明確にすることが可能となり、詳細な被害想定とこれに基づく防災対策を実施することがある程度可能な状況になったことから、首都中枢機能の維持や企業防災の観点からの対策強化の必要性と合わせ、首都直下地震対策が検討されることになったといいます。
首都地域は政治、行政、経済の首都中枢機能が集積し、かつ人口や建築物が密集しているため、大地震が発生した場合の首都中枢機能の継続性の確保と、人的・物的被害や経済被害の軽減策の推進は極めて重要な課題であり、このようなことから、本大綱では “首都中枢機能の集積地区”や“人口や建築物が密集している地区”を対象エリアとしたとしています。
また、本大綱は首都地域の直下で発生するM7クラスの地震を対象にするものの、首都地域では海側のフィリピン海プレートと太平洋プレートが陸側の北米プレートの下に沈み込んでいるため、M7クラスの地震の発生の様相は多様であり、選定した18タイプの地震像のうち、北米プレートとフィリピン海プレートの境界で発生するM7.3の「東京湾北部地震」を、首都直下地震対策を検討していく上での中心となる地震としたとしています。また、東京湾北部地震以外の17タイプの地震についても、本大綱の内容を十分踏まえて、地方公共団体、関係事業者、地域住民等が国の協力の下、必要な対策を講じることとするとしています。
なお、本大綱の策定をもって、南関東地域直下の地震対策に関する大綱は廃止されています。
【大綱の構成】
首都直下地震対策大綱は、次のような構成となっています。
【大綱の石油コンビナート等関連事項】
首都直下地震対策大綱は、石油コンビナート等に関連して、次の基本的事項を定めています。
● 南関東地震直下の地震対策に関する大綱
【大綱決定・改訂の背景、性格】
南関東地震直下の地震対策に関する大綱は、中央防災会議の平成4年8月の報告において、「今後直下の地震の発生の切迫性が高まってくることは疑いなく、100年から200年先に発生する可能性が高いと考えられる次の相模トラフ沿いの地震が起こるまでの間に、プレートの潜り込みによって蓄積された歪のエネルギーの一部がマグニチュード7程度の直下の地震として数回放出されることが予想される」ことが明らかにされたことから決定し、また、本大綱に基づき南関東地域の震災対策を推進する中で得られた知見、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた新たな施策の展開や社会・経済状況の変化、また、大都市震災対策専門委員会の提言の趣旨を受けて平成10年に改訂したとしています。
本大綱は、直下の地震の発生による被害の防止・軽減をあらかじめ図るために、対象地域において講ずべき地震防災に関する対策について、当該対策を総合的に推進する上で当面する課題を掲げ、かつ、当該課題に係る施策の進め方を示したものであり、国、関係地方公共団体、関係指定公共機関等は、一体となって、対策の具体化及び推進を図るものとされています。南関東地域内の住民や企業等においても、本大綱を踏まえた取り組みの推進が図られることを期待するとしています。
また、防災基本計画(震災対策編)は、長期的かつ総合的な視点から我が国において防災上必要と思科される諸施策の基本について、国、地方公共団体、指定公共機関等における各々の役割等を定めるものであるが、本大綱は、同計画に基づき、南関東地域の震災対策を推進するに当たっての課題と施策の進め方を具体的かつ実践的に定めるものであるとしています。
【大綱の構成】
南関東地域直下の地震対策に関する大綱は、次のような構成となっています。
【大綱の石油コンビナート等関連事項】
南関東地域直下の地震対策に関する大綱は、石油コンビナート等に関連して、次の基本的事項を定めています。
【参考資料】
災害対策基本法 平成17年10月21日改正
災害対策基本法施行令 平成19年3月28日改正
防災基本計画 中央防災会議 平成19年3月修正
地震防災対策特別措置法 平成12年3月31日改正
建築物の耐震改修の促進に関する法律 平成18年6月2日改正
大規模地震対策特別措置法 平成19年6月22日改正
大規模地震対策特別措置法施行令 平成19年6月13日改正
東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画 中央防災会議 平成15年7月28日修正
東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 平成15年6月18日改正
東南海・南海地震防災対策推進基本計画 中央防災会議 平成16年3月
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 平成16年4月2日制定
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画 中央防災会議 平成18年3月
東海地震対策大綱 中央防災会議 平成15年5月29日
東南海・南海地震対策大綱 中央防災会議 平成15年12月16日
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱 中央防災会議 平成18年2月
南関東地震直下の地震対策に関する大綱 中央防災会議 平成10年6月23日
首都直下地震対策大綱 中央防災会議 平成17年9月27日
平成19年版防災白書 内閣府
日本の災害対策 内閣府政策統括官【防災担当)
事業継続ガイドライン 第一版 −わが国企業の減災と災害対応の向上のために− 中央防災会議 平成17年8月1日
東海地震に関する新しい情報発表について 気象庁 平成15年7月28日